さいたま市 06/20(土)
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  • 蒲生商店街を歩く|昭和の面影と、変わりゆく越谷の今

    蒲生商店街を歩く|昭和の面影と、変わりゆく越谷の今

    蒲生駅の東口を出た瞬間、時間の流れが少し遅くなる気がした。派手さはない。煌びやかさも今は昔だ。それでも商店街に踏み込むと、焼き鳥のにおいが追いかけてくる。看板の書体が昭和を主張し、路地の奥に夜の気配が残っている。

    この通りに何十年も続いている店がある。最近オープンした店もある。その両方が並んでいる。商店街に漂う昭和の空気は本物だが、その隣で新しい何かが始まってもいる。これは、ある午後の記録だ。

    蒲生商店街とは

    蒲生商店街は、東武伊勢崎線・蒲生駅の東口から旧日光街道(埼玉県道49号足立越谷線)にかけて広がる、越谷市の地域商店街だ。

    新越谷・南越谷駅からも徒歩約15分の場所にある。東武伊勢崎線の各駅停車のみが停まる小さな駅だが、東口を出ればすぐに商店街が始まる。大型モールに囲まれた越谷の中で、個人商店が今も息づく数少ないエリアのひとつだ。

    商店街は大きく2つのエリアで成り立っている。

    駅前商店街

    東口を出てすぐ始まるエリア。緑色の柱にランプが吊り下がるアーチが入口の目印で、旧日光街道の大通りまでが範囲だ。飲食店・焼き鳥屋が集中し、路地にはスナック街が残っている。昼間でも食欲をそそる匂いが漂っていて、夕方以降は活気が増す。

    中央通り商店街

    大通り(旧日光街道)を渡ったさきに続くエリア。和菓子屋・喫茶店・文房具店・餃子屋・漢方薬局・パン屋など、生活に根ざした個人商店が並ぶ。昔から続く店と最近できた新しい店が、とくに区切られることなく混在しているのがこのエリアの特徴だ。

    蒲生商店街の歴史と成り立ち

    旧日光街道の宿場町・蒲生村

    現在の商店街一帯は、江戸時代から旧日光街道(日光道中)沿いの宿場・蒲生村として機能していた。江戸の日本橋から日光東照宮へと続く街道は、参勤交代の大名行列が通り、物と人を運ぶ幹線だった。蒲生はその通過点のひとつとして、旅人の宿と商いを支えてきた

    東武蒲生駅が開設されたのは明治32年(1899年)。ただし当初の駅舎は現在の新越谷駅付近にあり、明治41年(1908年)に現在地へ移転した。駅が今の場所に落ち着いてから、駅前に店が集まりはじめた。商店街の原型はそのころから形成されたと考えていい。

    商店街周辺には今も旧日光街道の痕跡がある。大通り付近には、江戸中期(宝暦7年・1757年)に街道補修の資材寄付を記念した石塔がある。歩く路地は違っても、人が行き来した記憶は地面に染み込んでいる。

    昭和高度成長期の賑わい

    越谷市の人口は昭和42〜51年のわずか9年間で約10万人増加した。武蔵野線・南越谷駅の開通(1973年)も重なり、この時期の越谷は急速に住宅地化が進んだ。人口の増加は商店街にも直結した。

    取材中、お菓子屋・伊勢屋の店主にこんな話を聞いた。「昔はひとがすごかったんだけどね……今は、、、」。常連のおじさんが横で黙って頷いていた。まっすぐ歩けないほどの人出があった時代の話だ。昭和40〜50年代、蒲生商店街はこの地域の生活の中心だった。食料品、衣料、日用品、飲食——生活に必要なものはすべてここで揃った。

    変化の途中にある今

    流れが変わったのは2000年代に入ってからだ。2008年、越谷レイクタウン(イオンモール)が開業した。それまでも郊外化の波はあったが、国内最大級のショッピングモールが近距離にできたことで、個人商店はさらに厳しくなった。店舗数は減り、空きスペースも目立つようになった。

    ただ、今日もシャッターを上げている店がある。炭火を起こしている人がいる。行列ができているパン屋がある。変化は起きているが、商店街はまだ動いている。

    駅前商店街を歩く

    東口を出ると、すぐにアーチが目に入る。緑色の柱が左右に立ち、提灯型のランプが商店街の入口を示している。柱には「蒲生駅前商店会」の文字。赤みがかったレンガ調の歩道が続く。自転車が数台停まっている。平日の昼過ぎだった。人影は多くないが、静かではない。奥のほうから焼き鳥のにおいが流れてくる

    喫茶 HIROSHI

    最初に目を引くのが「喫茶・軽食 HIROSHI」だ。赤と白のストライプの庇が横に広がっている。引き戸の向こうにOPENの札がある。昭和の喫茶店の様式をそのまま維持している。ガラス越しに見えるカウンターの奥に、モーニングのセットがありそうな佇まいだ。常連がゆっくりコーヒーを飲んでいる光景が目に浮かんだ。

    📍 住所越谷市蒲生寿町18-43
    ☎ 電話048-972-6775
    🕐 営業時間8:00〜22:00
    休業日無休

    路地に入るとスナック街

    駅前通りから少し横にそれると「寿通り飲食街」と書かれた看板が現れる。細い路地の奥に、夜だけ開く店の気配がある。昼間の静けさが、かえって夜の活気を想像させる。昭和のスナック街がこの形で残っているのは、越谷市内でも珍しい。知らなければ気づかずに通り過ぎてしまう場所だ。

    やきとり にしだ場

    駅前通りを歩いていると、焼き鳥のにおいが急に強くなる場所がある。「やきとり にしだ場」。軒先に提灯が連なり、持ち帰りもできる。いつもここの前を通るたびに引き込まれそうになる。妻の夕飯があるから今日も我慢して通り過ぎた。いつかここで買って帰りたい、と思いながら歩いた。

    📍 住所越谷市蒲生寿町18-32
    ☎ 電話048-930-7240
    🕐 営業時間月〜土 16:00〜23:30(L.O.23:00)/ 日・祝 13:00〜23:30
    休業日年末年始

    KOSHIGAYA HALAL FOOD

    緑の看板に英語とアラビア語が並ぶ「KOSHIGAYA HALAL FOOD」。ハラル食品の専門店だ。越谷にも多様なバックグラウンドを持つ人が暮らしているということを、この店の存在が静かに示している。昭和の商店街の通りにこういう店が普通に並んでいるのは、この街が今も更新されていることの証拠だ。

    やきとり・串焼き まるわ

    「やきとり 串焼き まるわ」。店の前を通るたびに賑わっているのが見える。看板の字体に力がある。焼き鳥と串焼きを中心に、夕方になると常連が集まってくる。にしだ場と合わせて、駅前通りは焼き鳥が強い通りだということがわかる。

    精肉専業 しのざき

    大通り手前の区間に、屋台のようなスタイルで商品を並べる肉屋がある。たれの甘辛い匂いが強烈で、前を通るだけで食欲に火がつく。店頭に商品が並ぶ開放的なスタイルは、地方の市場を思わせる。

    大通りを越えて、中央通りへ

    旧日光街道の交差点を渡ると、中央通り商店街が始まる。駅前の飲食ゾーンとは少し空気が変わる。食べるための店だけでなく、体のこと、暮らしのこと、文具のこと。生活のあれこれに応える個人商店が続く。古い店と新しい店が、とくに区分けされることなく並んでいる。

    大通りへの合流地点の近く、駐車場の一角に二宮金次郎の像が立っている。台座には「天明7年(1787年)誕生」と刻んであった。周囲を車が囲む中、一人で本を読んでいる。何十年もここにいるのだろう。蒲生の地にこういうものが静かに残っているのは、この街のおおらかさを象徴しているようだった。

    お菓子屋 伊勢屋

    ショーケースの中に、いそべとあんこのお団子が並んでいる。各120円。

    店主と常連さんで少し立ち話。

    「昔はひとがすごかったんだけどね……今は、、、」

    常連のおじさんが横で静かに頷いていた。ただ買ったお団子を食べながら、この店が今日も続いていることを考えた。

    あんこの量と甘さは、長年和菓子を食べてきた自分が素直に「うまい」と思う水準だった。これが120円という値段は破格だ。昔からここに通ってきた人たちが、この味を目当てに来ている理由がわかる。若い力でもっと蒲生を盛り上げたい、と思った場所のひとつだ。

    📍 住所〒343-0842 越谷市蒲生旭町6-29
    ☎ 電話080-9510-7152
    🕐 営業時間10:00〜18:00
    休業日日曜日

    喫茶 Savory

    「みんなの毎日におサボリ時間」というキャッチコピーが窓ガラスに書いてある。センスがいい。招き猫が店の中からこちらを見ている。イベントも定期的に開催しているようで、手書きのチラシがいくつか貼られていた。昔ながらの商店街に、新しい人の流れを呼び込もうとしている店の一つだ。駅前の喫茶HIROSHIとは別の方向で「喫茶」をやっている。どちらもここにいていい。

    コバヤシ(文房具・スポーツ用品)

    いつ通っても、お店の前で小学生がシール交換をしている。文房具とスポーツ用品を扱う「コバヤシ」。子どもが自然に集まってくる場所がある商店街は、まだ生きている証拠だと思う。大型店のチェーンにはない、地域に根ざしたアットホームさがある。

    ホワイト餃子

    伝説の餃子屋、と形容しても大げさではない店だ。義理の父が何十年も前に通っており、当時は1個10円程度で買えたという。今も変わらず続いている。その味を知っている人が今日も来て、買って帰る。昔からつづく味には、人の記憶が宿っている。

    テイクアウトは10時から。イートインは夕方から。水曜は休みなので注意。

    📍 住所〒343-0836 越谷市蒲生寿町10-49
    ☎ 電話048-986-1431
    🕐 営業時間テイクアウト 10:00〜16:00(生販売は売り切れ次第終了)/ イートイン 16:00〜20:00(L.O.19:30)
    休業日水曜日

    新生堂薬局(漢方)

    一見すると現代的なデザインの建物だが、「漢方 Kampo」の看板が目を引く。奥さんのむずむず病の症状をここで相談したことがある。薬剤師が丁寧にヒアリングしてくれたあと、処方された漢方がすぐに効いた。「良薬は口に苦し」という言葉の意味を、私も少し飲んでみて体で理解した。人生で飲んだ中で、一番苦い液体だった。それが効くらしい

    📍 住所〒343-0842 越谷市蒲生旭町11-1
    ☎ 電話048-986-7021
    🕐 営業時間9:30〜18:30(電話受付)
    休業日日・祝

    nicopan

    2026年6月にオープンしたばかりパン屋さん。国産小麦100%・無添加生地にこだわった焼きたてパンが並ぶ。11時の開店前から行列ができていて、中央通りに新しい客層を引き込んでいる。昔ながらの店と新しい店が同じ通りに普通に並んでいる光景は、蒲生の今を正確に表している。

    📍 住所越谷市蒲生旭町6-19
    🕐 営業時間11:00〜売り切れ次第終了
    休業日月・木・祝(不定休あり。訪問前にInstagramで確認推奨)

    炭火焼き鳥の屋台

    赤いテント。炭火の煙。ここを通るたびによだれが止まらなくなる。気さくなお父さんとお母さんが切り盛りしていて、メニューには和牛たたきがある。これが絶品だ。駅前のにしだ場と合わせて、蒲生は焼き鳥と肉の街だと確信する。

    無人ホルモン直売所

    「24時間 無人 ホルモン直売所」。治安がいいから成り立つ店だ。たまにホルモンが食べたくなる日がある。そういう日は、ビールを買ってここへ来れば完璧だ。無人販売が成立するということは、この商店街に人の信頼が残っているということでもある。

    📍 住所越谷市蒲生旭町(中央通り内)
    🕐 営業時間24時間

    OLI CAFE / 越谷豆花

    中央通りを一通り歩いて疲れたとき、最近できたおしゃれなカフェでひと息つける。テラス席があり、通りを眺めながらゆっくりできる。昭和の商店街の中に、ここだけ別の時間が流れている。

    自転車屋 ろーたす 蒲生旭店

    白い家屋のような外観の自転車屋。いつ通っても、誰かが自転車を修理してもらっている。この商店街は自転車で来る人が多い。それだけにこういう店が近くにあるのは、地域の人にとって実用的だ。

    📍 住所〒343-0842 越谷市蒲生旭町7-15
    ☎ 電話048-940-6580
    🕐 営業時間10:00〜19:00
    休業日水曜日

    昭和の痕跡を探して

    通りから少し外れたブロック塀に、黄色いホーロー看板が貼ってある。「風呂は丸久 東京ガス草加高砂ビス店 草加一番通り」。何十年も前のガス屋の広告が、今も剥がされずにそこにある。

    こういうものが目に入ったとき、蒲生の時間の厚みを感じる。誰かがそれを見て笑ったかもしれない。誰かが読まずに通り過ぎたかもしれない。それでも残っている。商店街の本通りだけ歩いていたら見逃す光景だ。蒲生で昭和を探すなら、路地や壁に少し目を向けてみるといい

    歩くときに知っておきたいこと

    自転車・車の交通量

    旧日光街道(県道49号)は交通量が多い。商店街内の通りも自転車の行き来が頻繁で、スピードを出す自転車が混在する。特に駅前から大通りにかかる区間は歩行者も多く、子ども連れや高齢者はとくに気をつけて歩いてほしい。散策に集中していると足元がおろそかになりがちなので注意が必要だ。

    個人商店の営業時間

    多くが個人経営のため、定休日や営業時間が不規則な店もある。午後〜夕方にかけてが最もにぎわう時間帯。目当ての店がある場合は、訪問前に確認してから行くことを勧める

    記録として

    商店街は変わっている。店の数は減った。人より車の方が多くなった。通りに人があふれていた時代は戻らないかもしれない。それでも、炭火の煙は今日も上がっているし、パン屋の前には行列ができているし、小学生はシール交換で盛り上がっている。無人のホルモン屋が24時間開いているのは、この街に人の信頼が残っているからだ。ホワイト餃子では、義父が何十年も前に食べた味が今も続いている。

    蒲生商店街は「昭和のまま」でも「終わった街」でもない。新しい店が来て、古い店が続いて、それが混ざりながら動いている。まだ途中なのだ。

    SAITAMAZINEが記録したいのは、完成した物語ではない。蒲生商店街は、そういう場所のひとつだ。

    ライター
    たけと

    兵庫県神戸市出身。都会の喧騒を離れ、たどり着いた新天地・蒲生(越谷市)で第二の人生を謳歌する元商社マン。 長野出身の妻、そして年子(0歳・1歳)の育児に奮闘しながら、越谷の心地よさを日々実感しています。満洲の餃子をこよなく愛する、自称・越谷の関西代表。

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